| 日時・会場 | 出演者 |
| 3月12日(火) 吉祥寺・Sometime |
清水 秀子(vo) 続木 徹(pf)、小井 政都志(b) |

清水秀子 1st. CD "My Treat" (95年)
清水秀子さんは、30年近くのキャリアを持つベテラン・ジャズ・シンガー。 プロフィール等は、こちらのglobal-artist.netさんのHPに詳しく紹介されていますので、是非、ご覧になってみて下さい。 なにを隠そう、清水さんの歌声を聴かせて貰うのは、今回が初めて・・・なんですが、実は、僕が彼女のライブを『聴いてみたい!』と思ったのには、ちょっと面白いエピソードがあるんですよ。
あれは、半年くらい前のこと・・・。 何だったか、行きたいライブがあって、吉祥寺・Sometimeに予約の電話を入れたのです。
『え〜と、XXのライブを予約したいんですが』 『はい、少々お待ちください・・・』
電話に出た店員さん、予約を入れるノートか何かを取りに行ったのでしょう、暫くの間が空いたのです。 その際、電話口の向こうから、とてもブルージーで、魅力的な女性ボーカルの声が、かすかに聴こえてきました。 ほ〜っ、なんだろ、これ? 良いなあ・・・。 僕はテッキリ、CDで黒人ブルースシンガーか何かの歌を流しているんだろうと思ったのですが、次の瞬間、店内の観客からと思しき、拍手と歓声が・・・。 えっ? これ、今、店でやってるライブなんだ・・・。 で、後になって、その夜の出演者を調べてみると、【清水秀子(ボーカル)】となっていたのです。
それ以来、是非とも清水秀子さんのライブを聴きたいと思い続けて、半年余・・・。 今宵、ようやく、それが実現しました。
今宵の共演者は、土岐英史(sax)さんとの『チキンシャック』や、デビッド・T・ウォーカー(g)との『バンド・オブ・プレジャー』等、フュージョン/クロスオーバーのバンドでお馴染みだったピアニストの続木徹さん。 そして、佐山雅弘(pf)さんとの『マサちゃんズ』で知られるベテラン・べーシストの小井政都志さん。 続木さんは、トロンボーンの向井滋春さんや、トランペットの高瀬龍一さんのバンドで随分前に聴かせて貰ったことがあり、イマジネーティブに広がりながら、軽やかに疾走するそのプレイに魅了されたものです。
ライブ開始前、ピアノの調子を見るため続木さんがポロリポロリと何気ないフレーズを試し弾きしています。 個人的に、ここ1ヶ月ばかりジャズのライブは御無沙汰だったので、そのピアノ響きを聴いただけで、『うぉ〜っ、やっぱり良いなあ』と思ってしまいました。 ファースト・セットは、先ず、続木さんと小井さんのデュオで、3曲。 ミディアム・テンポで、スタンダード曲の『ライク・サムワン・イン・ラブ』から始め、続いて、ウェイン・ショーター(ts、ss)の名曲『フットプリンツ』。 そして、これも大スタンダードで『ボディ&ソウル』。 どれも原曲の魅力をジックリと堪能させてくれる、味わい深い演奏です。 特に、『フットプリンツ』は、ウェイン自身の演奏では、あまりピンと来ないのですが、こうやって聴くと、いやはや、とてつもない【魔力】を持った凄い曲だな、と改めて感じました。
いよいよ、ここで、清水さんの登場となり、スタンダード曲、『ザット・オールド・フィーリング』からスタート。 続いて、『これはお馴染みかどうか分かりませんが・・・』と言いつつ、ロバータ・フラックも歌った隠れた名曲、『アンティル・イッツ・タイム・フォー・ユー・トゥ・ゴー』。 曲の持つ微妙な【肌触り】のようなものを感じさせてくれながら、サラッと、しかし、シミジミと表現する歌唱は見事です。
ロバータのレパートリーを歌う女性(ジャズ)シンガーは、昨今、多いですが、猫も杓子も『やさしく歌って』、『フィール・ライク・メイキン・ラブ』、『君の友達』・・・ばかりで、正直言って、食傷気味になります。 そんな中、こういう渋い曲を敢えて取り上げてくれる清水さんは、流石、ベテランらしい『自信』と『確信』を持って歌われているのだろうなあ、と思わせます。
ライブは、デューク・エリントンの『アイ・レット・ア・ソング・ゴー・アウト・オブ・マイ・ハート』を挟んで、『スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モスト』、『トゥー・マーヴェラス・フォー・ワーズ』と続き、ファースト・セット終了。 どれも派手さのある曲ではありませんが、ピアノ&ベースのデュオとの共演という落ち着いた佇まいにはピッタリくる選曲で、個人的に大好きな『スプリング・・・』も聴けて大満足です。
清水さんのボーカルは、声そのものがブルージーではあるものの、それを振りかざしてくるような所が皆無で、上記もしたように、全般的にサラッと歌う感じがします。 つまり、過度な【瞬間的衝撃(インパクト)】はないものの、ライブの1セット(5曲)を通した後、実に心地好く、『ああ、良い時間だったなあ』と思わせてくれる歌唱なのです。 【瞬間的衝撃(インパクト)】は、ある意味、『練習すれば誰でも出来る』みたいなところがあるように思いますが、こういう後味の心地好い歌唱(表現)は、チョットやソットじゃ出来るものではないでしょう。 やはり、20年〜30年の間、シーンの最前線で活躍し続けてきた人は違います。
セカンド・セットは、先ず、ピアノ&ベースのデュオで、『チェロキー』(“デュオでは珍しいですが、やりたくなったんで・・・”と続木さんから解説あり)、そして、スティービー・ワンダーの『ファースト・フィナーレ』から『クリーピン』etc.が演奏されます。 スティービーの曲も、ロバータ・フラックの曲のように、現在、ニュー・スタンダードとして取り上げられることが多いですが、『クリーピン』は珍しい選曲で、先ほどの『アンティル・イッツ・タイム・フォー・ユー・トゥ・ゴー』と同様、思わずニヤリとさせられました。
ここで、再び清水さんの登場となります。 ピアノの続木さんは、清水さんとの共演が楽しくて仕方ない、といった感じで、マイクも持たずに、生声で清水さんを呼び入れます。 まさに、気分はご機嫌、といった具合。 勿論、聴いている此方もご機嫌な気持ちで、お酒も進み、ここからの選曲は、ちょっと良く覚えてません(笑)。 しかし、『ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス』、そして、ベナード・アイグナーの『エブリシング・マスト・チェンジ』を歌われていたのは覚えています。 特に、後者は、綾戸智絵さんや越智順子さんと言った、僕が多く聴いてきたシンガーの愛唱歌でもあるので、注目しましたが、ここでも清水さんは、不必要に感情移入し過ぎることなく、サラリと、しかし、確実に原曲のもつ『感情』を呼び起こす、見事な歌唱を聴かせてくれました。
清水秀子さんは、95年に唯一“My Treat” というCDを発表されていますが、現在はライブを中心に活動されているようです。 『ポッと出』の女性ジャズ(もどき)シンガーでも、CDデビューのチャンスが割合と簡単に手に入るようになった昨今、『ライブ現場』という『時間と空間』を心地好く演出してくれる、清水さんのようなベテラン・シンガーの歌唱こそ、大事に聴いて行きたいものだと思います。