日時・会場 出演者
5月11日(土)
川崎・クラブチッタ
PFM(Premiata Forneria Marconi)

Franz Di Cioccio(dr/vo)
  Flavio Premoli(key/vo)
  Franco Mussida(g/vo)
  Patrick Djivas(b)
  Lucio Fabbri(vln/key/g/vo)
  Pietro Monterisi(dr)



『www.pfmpfm.it (il best)』
98年発表の最新ライブ盤
皆さん、オッちゃんになりましたねぇ(笑)


誰がなんと言おうと、僕は【プログレ】が好きなんです(・・・イキナリだな、笑)。 え? 【プログレ】って知らないですかぁ? 【プログレ】=【プログレッシブ・ロック】、誰が付けたか、この愛しい名前・・・いやはや、なんとも(・・・早く話しを展開せんかいってか?、笑)。  

【プログレ】とは何ぞや・・・の説明は、まぁ、人によっては三日三晩かけても足りない、と言うであろう、実に奥深き内容を伴いますので、ここでは省きます。 詳しく知りたい方は、以前、僕の【JAZZ@totorom】(ジャズ専門ホームページ)に元さんが執筆してくれていた『プログレ教室』を御覧ください。 『プログレ教室』は、元さんのHP『元(GEN)楽器工房』から見る事が出来ます。

さて、その【プログレ】全盛期の72年にイタリア国内でデビューし、翌73年、ELP(エマーソン・レイク&パーマー)の【マンティコア・レーベル】から全世界へと飛び出した人気バンドが、この【PFM】です。 なんと、今回は1975年11月の初来日以来、実に約27年ぶりの再来日公演! 【PFM】というバンドは、『イタリアを代表する』プログレ・バンドであり、イタリアの文化、気質をその音楽に深く感じさせてくれます。 同時に、『イタリア』というキーワードから離れ、『全世界的』に見ても、70年代の【プログレ・ムーブメント】を代表するバンドであると、僕は思っています。  【プログレ】のワールド・カップがあったら、当然、『イタリア代表』の先発メンバーになるでしょうし、【プログレ世界選抜】にも名を連ねること間違いなし! 今から、約20年前、僕が現役の【プログレ少年】(?)だった頃、彼等の『幻の映像(Photos of Ghost)』(写真・右)というアルバムを聴いて大感動した覚えがあります。 僕は、70年代の全盛期を知る【プログレッシャー】ではありませんが、20年来、彼等の演奏を折々に聴いて、感動を新たにしてきたのです。 その【PFM】の生演奏が、体験出来ちゃうとは、なんたる奇蹟、なんたる感激!

ところで、いつから【プログレ・ファン】のことを【プログレッシャー】と呼ぶようになったんでしょうねぇ? 20年前には、そういう呼称は無かったと思うけど。  でも、なんか、オドロオドロしい感じがあって、良いですね、【プログレッシャー】・・・(笑)。

約27年ぶりの来日公演・・・既に大阪ブルーノートでの2days公演を終え、バンドは東京へ移動。 東京公演は、【クラブ・チッタ川崎】での3daysです。 各日600名限定ということで、最初の2daysは完売、最終追加公演も殆ど売り切れという熱狂ぶり。  そりゃ、そうだよねぇ、なにせ27年ぶりだもんね(笑)。  さあ、勇んで川崎に乗り込み、いざ会場へ。  よくよく考えると、外タレのロック・コンサートなんて、就職して以来、この10数年間、殆ど行ったことがありません。  入り口で手荷物検査・・・カメラや録音機材を持ってないかのチェック・・・を受けるという体験も実に久々です。  どうやら最終日公演にビデオ撮影が予定されているようで、いずれDVDか何かで発売するのでしょうが、そういう事情もあってか、結構厳しいチェックがされていました。  手荷物検査なんて、普通ならウザッタイと思うんですが、妙に『いやぁ、ロック・コンサートだなぁ〜』と思えて、感動してしまうことしきり・・・チョット変か?  

入り口でドリンク代500円を支払って、エントランス左手奥のバー・カウンタでドリンクを受け取ります。 指定席だったので、ギリギリで良いだろうと思って、開演5分前くらいに入ったのですが、それでもカウンタには長蛇の列。  う〜ん、熱いぜ!  列を見ると、20歳代後半と思しきアベックやらも混じっていて、想像していた客層とちょっと違うかな? ・・・で、ドリンクをゲット後に、エントランスを挟んだ反対側のホール方面に向うと、うぉ〜っ、居る居る、期待通りの(?)【その筋】と思しき、【プログレッシャー】の皆さんです(笑)。 それにしても、なんたる【長髪男性】の人口密度! ひゃ〜っ、ますます熱いぜ!  ホール入り口手前には、お約束の物販コーナー。  『幻の映像』の裏ジャケットを飾っていた【PFM】のロゴマーク(写真・左)と、ダイナミックな大波と富士山で有名な葛飾北斎の浮世絵『神奈川沖浪裏』を組み合わせた特性Tシャツが目を奪います。  しかし、【日本公演】→【浮世絵】・【フジヤマ】・・・という何ともイージーかつステレオタイプな発想が、実に【せぶんてぃーず】していて、これぞ【プログレ】の真骨頂!ってか?(笑)  Tシャツと並んで、ツアー・パンフレット、そして、【メンバー自身がイタリアから持ってきました】という手書きのハリガミが泣かせる、90年代後半以降のイタリア盤CD。 ちなみに、そのイタリア盤CDは、2枚組ライブ盤以外、既に売り切れでした。    物販コーナーの向い側には、【ディスク・ユニオン・新宿プログレ館】の出張コーナーが設けられており、【PFM】の限定紙ジャケットCDシリーズ等が飛ぶように売れていました。 

関係ないですが、【プログレ館】の販売員さん達は、コンサートを観られたんでしょうかねぇ? 仕事で来てるんだから、観ちゃ駄目とか言われてたら可哀想ですね。 役得で、立ち見とか2階席で観られたのかな? もしかして、『只で後ろの方で観ても仕方ない。 俺は前の方で観たいんだ』とか言って、ワザワザ、前売りを買った豪傑も居るかも知れません。 まぁ、どうでも良いことですね、スイマセン。


前置きが長くなりましたが、いよいよ、ホール内に入りますと、既に満席状態。  普段はオール・スタンディングの箱らしいのですが、当夜はフロア狭しとイス席がビッチリと並べられています。  客席には、年季の入った【プログレッシャー】の方々も勿論いらっしゃいますが、意外と若い(20歳代)観客や、女性の姿が目立ったのが印象的でした。  で、僕の席は、と言うと、一般発売前の先行予約にエントリーしたのが功を奏したようで、前から5列目。 ステージ向って右寄りの端の方でしたが、経験上、少し端に寄った席の方が、ドラマーやキーボード奏者の手の動きなどが観られて、好都合です。  いやはや、良い席ですよ、有り難いねぇ。  ステージ中央に多くのタムやシンバルがセットされたドラムが配置され、向って右端、僕の目の前にキーボード群、そしてギター・アンプ&生ギター2本。 反対側には、ベース・アンプと、サポート用キーボード&ギターなど。  ステージ上方の照明ライトの多いこと、多いこと。  いやぁ〜、ここまでフル装備のコンサートなんて、本当に久しぶりだなあ、ワクワクします。

開演予定から10分押しで場内が暗転。 勿論、観客席は早くも熱狂の渦です。  ステージ後方から、スモークというか、霧のようなものが噴射され、照明効果を上げます。  そして、さあ、やって来た、やって来た。 5人のメンバーがステージに登場。 軽く手を振って、熱狂的歓迎に応えています。  因みに、来日メンバーですが、72年のデビュー時のオリジナルの3人、フランツ・ディ・チョッチョ(ds)、フラビオ・プレモーリ(key)、フランコ・ムッシーダ(g)、そして、74年のアルバム『蘇る世界』からメンバーに加わったパトリック・シヴァス(b)の4名が正式メンバーとしてラインアップされています。 この4人は、前回(75年)の来日公演にも参加していたメンバーです。  この4人に加え、サポート・メンバーとしてルーチョ・ファブリ(vln, key, g, vo)とピエトロ・モンテリジ(ds)が帯同。  サポートと言っても、ルーチョ・ファブリは、80年代に【PFM】の正式メンバーであった人物ですので、事実上、ファブリを加えた5人が【PFM】と言って良いでしょう。  ドラムのチョッチョは、ブルーの法被を羽織り、オーバーアクション気味に両手を高々と挙げて、ドラム・セットにスタンバイ。 しかし、これまた、【日本公演】→【法被を羽織る】・・・という何たるイージーかつステレオタイプな発想! 羽田空港に降り立ったビートルズじゃないんですから・・・(笑)。 ・・・むふふ、でも、僕は、こういう感覚の人、凄く好きです。 この馬鹿馬鹿しさが良いのです。 【プログレ】なんです(笑)。 

さて、オープニングは、彼等のイタリア国内デビュー盤『幻想物語』(写真・右)から『ハンスの馬車(La carrozza di Hans)』。  いやはや、兎に角、先ずは各メンバーの演奏の馬鹿テクぶりには驚愕。 激しい、アグレッシブな演奏でいながら、見事なバンド・アンサンブルを聴かせる完成度には完全KOされます。  スゲ〜やぁ、こりゃぁ、やっぱり!  縦横無尽に暴れまわりながらも決してうるさくないチョッチョのドラムと、演奏の底辺に分厚く広げられた絨毯のような頼もしいシヴァスのベースが、バンド演奏の【床から天井】=【垂直ライン】を完全掌握。 そして、ムッシーダのギターとプレモーリのエレピ/オルガンが、グングンと横方向に広がり、【水平ライン】を伸長させ、ファブリのエレクトリック・バイオリンが、そのスペースを突き抜けて行く・・・という、見事、見事、見事過ぎる、これぞ究極の【バンド演奏】! 一曲終わってブレークになると、場内、爆発的な大歓声! そして、なにより、メンバー各人が、観客以上に熱狂しているのが分かります。 チョッチョは、ドラム・セットからワザワザ降りてきて、飛び跳ねるように喜びを全身で表現。 『グラッチェ!』、『サンキュー!』、『ドーモー!』のトライリンガル同時通訳状態で、各メンバーがマイクを通して絶叫します。  

後々、【PFM】のオフィシャル・ホームページを見て分かったのですが、97〜98年辺りから再結成ツアーを展開している彼等は、イタリア国内でこそ精力的なライブ活動を続けているものの、国外での活動は全く行っていなかった(出来なかった?)ようで、どうやら今回の日本公演が再結成後では初の海外公演だったようです。  まあ、こういう例が良いかは分かりませんが、例えば【YMO】が再結成した場合、日本国内ではツアーする(出来る)でしょうが、じゃあ、70〜80年代のように欧米までツアーに行くか(行けるか)?・・・というと、やっぱり、行かない(行けない)でしょうね。 そう考えると、【PFM】のメンバー達は、『日本のファンは熱心なのは分かるけど、本当に以前のように俺たちのことを待っていてくれるんだろうか?』という気持ちがあったと思います。 まあ、もうベテランですから、【不安】というのは無かったかも知れませんが、やはり、【国外ツアー】って大変ですよね。  そういった中で、このような文字通り【熱狂的な歓迎】を肌身で感じて、彼等は本当に嬉しかったんだと思います。  

続いて、各人が各々の位置に戻り、ムッシーダがエレキ・ギターから、クラシック・ギターに持ち替え、木製のスツールに腰をかけます。 ギターから紡ぎだされるアルペジオ・・・うぉ〜〜〜〜〜っ! 『人生は川のようなもの(River of Life)』だぁ!  全世界に向けて【PFM】の魅力が放たれたアルバム『幻の映像』の冒頭を飾る名曲。 いやはや、こりゃ、参ったぁ・・・。  哀愁たっぷりのギターのイントロから、オリジナルでは今回参加していないマウロ・パガーニが吹奏していたフルートのパートを、プレモーリがエレピで演奏。 そして、荒狂うハードなパートへ、と雪崩れ込む。 チョッチョのパワフルなドラミングが炸裂。  ルーチョ・ファブリのバイオリンも頑張る。  そこから、又もや静かなパートへ転換。 ムッシーダがリード・ボーカルを取ります。 ちょっと危なっかしいボーカルですが、それが逆に、あの30年前のアルバムでの繊細な雰囲気を再現していて、堪りません。  歌詞は、あのピート・シンフィールドが書いた英語詞で、アレンジも、『幻の映像』のオリジナル版をそのまま採用した演奏です。 

続いても、涙モン名曲のオンパレード。 プレモーリが弾き語りでリード・ボーカルを取る『幻の映像』(これも英語で歌っていた)。 こちらもオリジナルと殆ど同じアレンジで聴かせてくれます。  徐々にドラマチックな展開となる、中間部のインスト・パートの緊張感は、ライブならでは。  ファブリのバイオリン・ソロの背後でドライブしまくるリズム隊とキーボード&ギターの凄まじさ。 その後、キメのパートも、プレモーリがコントローラ部のツマミを回しながらムーグ・シンセ(!)を駆使して、あの懐かしいアナログ・シンセ音を再現。  いやまあ、しかし、今時、あんなツマミが付いたシンセサイザーを使っている人なんて、他に居ないだろうなぁ(笑)。  オリジナルのアルバム・バージョンでは3分半あたりにあった、あの印象的なフォーク調アコギのパートは、どうするのかなぁ?と思っていたら、なんと、ファブリがバイオリンからアコギに素早く持ち替え、ムッシーダのエレキギターとユニゾン。  派手に盛り上げるチョッチョのドラムに、唸るシヴァスのベース! も〜、何から何まで、あの30年前のオリジナル盤を再現しつつ、更なる熱さ、更なる緊張感、更なる切れ味で聴かせる! 凄いぞ、素晴らしいぞ、やっぱり、良いっ!  そして、曲は、【マンティコア・レーベル】からの最終作となった77年のアルバム『ジェット・ラグ』(写真・左)から、ムッシーダのアコースティック・ギターのソロで『ペニンシュラ』。  曲のタイトル、【半島】とは、勿論、彼等の故郷【イタリア】を意味しているのでしょうが、哀愁を感じさせるフレーズ、そして、何か民族楽器のような響き・・・と、エキゾチックな雰囲気があります。  昨夏、イタリアに3日ほど仕事で行ったのですが、その時に感じた彼の地の風の感触を思い出せてくれました。  

この後、ドラム・セットから降りてきたチョッチョが、ステージ前方のスタンド・マイクでリード・ボーカルを。  チョッチョは、どうもフィル・コリンズの影響もあって、70年代末期からスタンディングでリード・ボーカルを取るようになった模様。 元々、【PFM】は【ジェネシス】からの影響も強いバンドで、チョッチョのステージ・パフォーマンスも、フィル・コリンズや、ガブちゃんの【ジェネシス】的なシアトリカルなものも取り入れているようです。  曲は、75年のアルバム『チョコレート・キングス』(写真・右)から『アウト・オブ・ザ・ラウンドアバウト』。  これは、オリジナル盤では、ベルナルド・ランゼッティというリード・ボーカリストが歌っていたのですが、当夜は、チョッチョが歌います。 普段は、あまり歌わないレパートリーなのか、チョッチョは、譜面台に歌詞カードを載せ、メガネ(老眼か?)をかけて歌っていました(なんか微笑ましい)。  『チョコレート・キングス』は、アメリカへの本格的進出を狙ったアルバムで、クロスオーヴァー〜フュージョン的な感じがあり、個人的にこの曲も凄く好きなんですが、オリジナルでは、ランゼッティの歌声がイマイチなんですね。  これをチョッチョのリード・ボーカルで聴けたのは嬉しい。 全編にわたってサポート・ドラマーのピエトロ・モンテリジが叩いていましたが、筋肉質な強力ドラムで、骨太な強さのチョッチョのドラムとのコントラストは面白かったです。  

ここから数曲、チョッチョが前に出ずっぱりになります。 『え〜っ、俺たち新しいアルバムを出したりしているんだけど〜、へ〜っ、あ〜っ・・・(云々)』等と解読困難な英語でのMCから、どうやら、その最新作『SERENDIPITY』(写真・左)からの曲、『La rivoluzione』のようです(スンマセン、近作は未聴なもんで・・・)。  イタリー語で歌われた曲で、一言で言って乗りの良いポップ・ロック。  チョッチョは、ロッド・スチュアートか、あるいは矢沢エイちゃんか、はたまた【アラジン】(完全無欠のロケンローラー)かといった具合に、スタンド・マイクを持ち上げて、ステージ狭しと大暴れ(?)。  で、何と言っても、思わず笑っちゃったのが、ドラム・スティックを数本、背中から腰にかけて、ズボンの後ろ側に突っ込み、尚も、今まで自分が叩いていたスティック2本を腹に突っ込んで、そのスティックにタンバリンを引っ掛け、それを両手でパタパタと叩くという・・・いやはや、こりゃ、オヤヂ臭いなあ、やることが(笑)。  背中にスティック入れるだけでも充分に野暮ったいけど、腹にスティック刺すか、普通? しかも、そこにタンバリンをぶら下げるかぁ?  なんというオヤヂっぽさ!  しかし、なんとも言えず微笑ましい、50を過ぎたオヤヂならではの味わい、雰囲気カモカモ!  トドメは、曲のクライマックスで、チョッチョ、ジャーンプ! うぉ〜っ、【ヴァン・ヘイレン】時代のデイブ・リー・ロスみたいだぁ・・・と言いたい所ですが、これが、なんと僅かに高度12センチ(推定)という小ジャンプ(笑)。  いやあ、まあ、見せてくれるぜ、熱いぜ、フランツ・ディ・チョッチョ!  う〜ん、僕は、こういう人、ホントに好きです。 大好きです。  バンドに、こういう人が一人でも居てくれると、本当にステージが華やぎます。 

続いて、【PFM】にとっては中期、ファナティックな【プログレッシャー】からの評価が分かれる時代の代表的な作品、80年に発表されたアルバム『Suonare Suonare』(写真・右)の表題曲。  これは、【プログレ】というよりは、【PFM】が根源的に持っている【ポップ・ロック性】が如実に出た魅力的な楽曲で、イタリー語で歌われます。  なにか心に引っ掛かってくる、印象的な、そのメロディは、【イタリー語で作曲されたメロディ】という感じです。 【プログレッシャー】からの評価は低いかも知れませんが、【PFM】の本質は、【プログレ】である以前に、やはり、このような素晴らしい【ポップ・ロック性】にあるような気がしてなりません。  そして、それよりも何よりも、彼等は何と言っても【イタリアのバンド】なんですよね。  つまり、彼等の本質は、【“イタリーの語法”で音楽を作っている】というところにあるのではないでしょうか?  これは、何も歌詞がイタリー語だから、というのではなく、メロディやリズムをはじめ、楽曲そのものが持つ【肌触り】のようなものが、すべて【イタリアン・ネイティブ】である彼等自身の根源から産みだされている、ということです。 その根源が、揺ぎ無くシッカリとしているからこそ、彼等の音楽は、長く、そして深く、世界中の人々に愛されているのでしょう。  

ここから再び【マンティコア時代】の初期の作品に戻り、アルバム『幻の映像』から『プロムナード・ザ・パズル』。  オーバー・アクティングなパントマイムを加えながら歌うチョッチョの姿は、『シネマ・ショウ』を歌うフィル・コリンズと重なって、なんとなく、微笑ましいものがあります。 この曲を(シンフィールド作の英語詞で)歌うのは久々なのか、再度譜面台に歌詞カードを載せ、メガネをかけて歌っているあたりも、時代を感じさせました。  チョッチョが前に出ている間は、ピエトロ・モンテリジが叩いていましたが、途中のインスト・パート〜【タートルズ】の『ハッピー・トゥギャザー』みたいな部分〜では、チョッチョがドラムに戻って叩きます。  二人羽織みたいな感じで、2人のドラマーが1つのドラム・セットの背後に重なり合っている姿も面白いです(笑)。  

インスト・パートが終わると、チョッチョがステージ前に再び戻り、ボーカルを取ります。 なんとなく、後期の【ビートルズ】のような雰囲気が漂い、シアトリカルに乗りまくって歌うチョッチョは、フィル・コリンズというよりは、風貌の影響もあるんでしょうが、ジョン・レノンの良い意味でのクレージーぶりと繋がっているように思いました。  そうやって考えると、このバンドは、凄く【ビートルズ】から影響を受けている・・・いや、【ビートルズ】がそのまま重なるな、と感じます。  親しみ易いメロディ・パートでリード・ボーカルを取っていたプレモーリは、ソングライティング/サウンド・クリエーションのリーダー的な存在で、ポップ性の根源・・・これはポール。 クールなムッシーダは、ジョージ。  飄々としつつも、時々、唐突に他のメンバーの近くに寄ってきて無言のチョッカイを出したり、曲の途中で急に縦笛リコーダーを吹いたり、とオトボケ役のシヴァスは、こりゃ完全にリンゴですね。  メンバー各人のキャラクタと才能の絶妙なバランス・・・これこそが、奇跡的な化学反応を起こす、ケミストリー!  う〜ん、やはり【PFM】は、【プログレ】という概念だけでは捉えきれない、凄いバンドです。 

ファースト・セット最後の曲は、アルバム『蘇る世界』(写真・左)から『原始への回帰』。  導入部のインスト・パートの演奏の凄いこと、凄いこと。  テンションがみなぎるアグレッシブな演奏ですが、決して荒っぽくなることはありません。 馬鹿テクでありながら、メカニカルな堅苦しさも無くて、いやぁまぁ〜、スゲー、スゲー。  バンド全体のドライブ感は、チョッチョのドラミングが繰り出す暴力的なパルスが起点になります。 或る意味、古いスタイルのドラミングなんですが、リズムのグラディエイションの付け方が【強・弱】ではなくて、【極強・強】の使い分けで構成されているところが、良いんです。 最近のドラマーには、無いですね、こういうタイプ。 プレモーリの変幻自在なムーグ・シンセでのソロ、ムッシーダのジャズ・ロック風なギター、底から抉ってくるジヴァスのベース・・・と各人ともに本当に良い仕事をしてます。 ・・・といった圧倒的な演奏でファースト・セット終了。 途中のMCも殆ど無しで、楽器チェンジの短いブレークだけを挟んだ、約60分の快演。 ひゃぁ〜、凄かったです。 も〜、なんか、これで充分って感じで、完全にヤラレちゃいました。  でも、まだまだ、あるんです(笑)。 約15分のインターミッションを挟んで、セカンド・セットへ・・・。

セカンド・セットは、プレモーリの無伴奏ピアノ・ソロから静かに展開。 曲は、72年のデビュー盤、『幻想物語』から『何処で・・・何時・・・』。  インターミッションを挟んでもテンションは全く下がることがありません。 この辺りは、凄いですね。  続いても初期の曲で、オリジナル盤よりもテンポ・アップして、よりアコースティック・フォーク・ロック調にアレンジされた、『晩餐会の三人の客(Il banchetto)』、そして、そこから雪崩れ込むように『Dolcissima Maria(通り過ぎる人々)』。  このセットは、イタリー原語による、ポップ性がある楽曲が続々と披露され、アルバム『Suonare Suonare』から、『Maestro della voce』、『Si puo fare』と続きます。 【プログレ】と言うと、どうしても重厚で壮大な、ドラマチックな世界・・・というイメージがありますが、【PFM】の魅力の源として、こういった【ポップ・ロック】のエッセンスを見落とすわけにはいきません。 【プログレ】と総称される音楽(バンド)は、時代の流れの中、浮き沈みしていく傾向があるように思いますが、息の長い活動をする為には、意外と、こういった【根源的なポップ性】が必須なのではないか、と、【PFM】のステージを観ながら思いました。  ビート・バンドからスタートして、『サテンの夜』に代表されるポップ性を常に持ち続け、未だに活動している【ムーディ・ブルース】などは、その代表ではないでしょうか? それに比べて、登場した時に既に【プログレ】という特性を背負ってしまっていた【ELP】は、(再結成もあったとは言え)比較的ピーク期が短かった・・・、そんな感じがします。  

さあ、ライブは、いよいよクライマックス! お馴染みのドラムスのブレーク・インから『ミスター9〜5時』が、ガツーンとスタート。 いやはや、インスト・パートの演奏は、ホントに凄い。 そして、74年のライブ盤『クック』と同様に、『アルタ・ロマ5〜9時』〜『ウィリアム・テル序曲』とメドレーに雪崩れ込みます。 ステージ上の演奏の盛り上がりは尋常でない状態になりますが、決して破綻することはなく、爆発的ながら、その爆発が拡散せずに、まるで天高く、宇宙の彼方に突き進んで行く、打ち上げロケットのように、グングンと昇りつめていきます。 このステージ上で巻き起こったウネリのようなものは、ちょっと文章では再現不能(ビデオでも無理か?)。  生で体験したものの特権、ということでご勘弁ください(笑)。  演奏後は、僕の席から見る限り、可也の数の観客がスタンディング・オベーション状態でした。  バンドの面々も、大興奮で、あるいは観客よりも熱狂している風です。  勿論、場内はアンコールを求める大声援の雨嵐になり、客席の一部からは『ぴー・えふ・えむ!』の小合唱(!)も。  思わず、【UK】の東京でのライブ盤を思い出してしまいました(笑)。 (あれは開演前に、“UKコール”の練習があったとか、なかった、とか???)
 
暫くして、メンバーがステージに戻り、ムッシーダから『曲は、The World Became The World(蘇る世界)』とのMC。 場内、大喝采。 何処か哀愁を漂わせる印象的なメロディのテーマが歌われますが、ムッシーダは英語ではなく、イタリー語で歌っていました。 ということで、実際の曲目は、『蘇る世界』(英語版)ではなく、【PFM】にとってはイタリア国内でのデビュー曲となる『九月の情景(Impressioni di settembre)』となります。  思わずグッと来てしまう、ムーグ・シンセサイザーによる、お馴染みのフレーズが堪りません。  心に染み込み、また、同時に心が抉られるような、この泣きのメロディが、【日本人好み】と言えなくもないのでしょう。  名曲です、やはり。  さあ、そして、そして、アンコールは、そのまま、お待ちかねの【あの曲】に突入です。  勿論、曲は、【PFM】にとって最大の世界的なヒット、『セレブレーション』!  観客は、総立ちで、文字通りの【お祭り騒ぎ】。  プレモーリのミニ・ムーグが奏でる、あのメロディ。 ムッシーダのギターのリフ。 ひゃ〜ぁ、なにからなにまで、ホンモノだよぉ〜、オッカサン(?)。 爆走するリズム隊に煽られて、乗りに乗る、ステージの上も下も大爆発。  コーラス部は、英語版の『セ〜レブレイショ〜ン!』ではなく、イタリー原語の『エ〜フェスタア!』で大合唱。  アンコールに持ってきた有名な2曲を英語版でなく、敢えてイタリー原語で歌うあたり・・・、『俺たちは、あの【マンティコア】時代の【PFM】ではなく、今、現在、イタリアで活動しているワーキング・バンドとしての【PFM】なんだ』・・・という彼等の拘りが感じらるようです。  しかし、一番最後の最後のコーラス繰り返しの部分だけは、『Celebration!』と英語で歌う心憎い演出。 勿論、ここで、場内、大合唱! いやぁ〜、なんか、胸が熱くなります。  

かつて、バンドの中心人物であったマウロ・パガーニは、『毎晩、毎晩、“セレブレーション”ばっかり演奏せにゃイカンのは耐えられない』と言ってバンドを脱退したそうです。 それは、恐らく、『ロック産業に埋没したくない』、という意味でしょう。  【PFM】は、【英語文化圏】主導のロック産業に一時は振り回されたバンドですが、深読みすれば、今回のコンサートの最後の最後に、敢えて【イタリー語→英語】に変換して歌った背景には、『(英語圏のロック産業に翻弄された)過去を受け入れながら、現在〜未来の自分達の(イタリアの)音楽を作り出そう』という意気込みが込められていたようにも思えます。  

このコンサートが、とても、とても感動的だったのは、単なる懐メロ大会に終わらず、【プログレ以後】の現在の【PFM】の姿を、短い時間で余すところなく、魅せてくれた所だったと思います。  これを機会に、今後の【PFM】の活動が日本でも注目されて欲しいですし、是非、又、新しいレパートリーを加えたライブ・パフォーマンスを、再度、日本で見せて貰いたいものです。  




来日記念パンフレットから、1975年のライブステージの模様。
ドラムのチョッチョの背中に御注目。 当時から、スティックを挿してたんですね・・・(笑)
しかも、法被も羽織っているし・・・(この写真はイタリアでのライブだそうです)