| 日時・会場 | 出演者 |
| 4月17日(水) 吉祥寺・Art Club Strings |
天野昇子(vo) 山本剛(pf)・香川裕史(b) |
以前から聴きたいと思っていた、ベテラン・ジャズ・シンガー、天野昇子さんのライブです。 天野さんは、長年、ニューヨークで活躍されており、年に2回ほど日本に戻ってライブを展開されています。 当夜は、ピアノのベテラン、山本剛さんとの共演とのことで、剛さんのプレイも久々、楽しみです。
さて、当夜のお店、Stringsに天野さんは初出演、とのことでしたが、熱心なファンの方や、店の常連さんが多く来店され、満席で盛り上がっておりました。 先ず、山本剛さんと香川裕史さんのデュオで2曲。 剛さんのプレイは、ジャズが持つ特性のうち、【肉体的なゴリゴリ感】を排除した、【情緒的な部分】の全てを兼ね備えているかのようで、本当にステキです。 ポロリポロリと弾き綴っていくフレーズの、その一音、一音の隙間に、お洒落でいながら何処か切ない、ウキウキしつつもジーンと来てしまう、えも言われない情感が満ち溢れています。 しかし、ベーシックな部分には、底抜けにハッピーなものが流れている。 ベースの香川さんは、いつも実に楽しそうに演奏するプレイヤーですが、剛さんのプレイには、より一層、ハッピーでタマラナイ、といった表情になっていました。
さあ、いよいよ、ここで天野さんの登場。 地声がハスキーなのかも知れませんが、どうやら風邪気味のようで、ちょっと苦しそう。 特に、高音部の歌唱が抜け切れない感じがします。 ベストの状態で聴けなかったのは、ちょっと残念ですが、しかし、そういった悪条件も物ともせず、堂々と、余裕で歌って聴かせてしまうあたり、感心させられました。 曲は、スタンダード曲を中心に、ボサノバなども入れた構成です。 ミディアム・テンポ以上の速めの曲が多かったのですが、出来れば、もう少しバラッドをジックリ聴いてみたい感じがします。
修練に修練を重ねたのであろう、見事な発声と、声自身が持つダイナミズムは迫力満点です。 個人的な最近の嗜好としては、あまりこういうタイプは好きではないのですが、圧倒的な【声圧】は、(天性の部分もあるのでしょうが)凄いの一言。 又、天野さんの歌は、横に振れる(揺れる)スイング感よりも、前後に【圧】を押したり引いたりしてくる、ウネリのようなものが強いように思いました。 個人的な好みとしては、【横揺れ】が好きなので、正直言って、ツボにはまらなかったのですが、それでも流石だな、と思わせるものがあります。
【本場ニューヨークで長年活躍】というキャプションがつくと、『ネイティブみたいな発音』という予想がたち、なんかチョット厭らしい感じもあるのかな、と思ったのですが、天野さんは、【本場のジャズ】というよりは、むしろ、【昭和歌謡ブルース】・・・青江三奈さんとか、あの時代のブルース系の歌謡曲です・・・の色を残しているように感じました。 発音は綺麗ですが、米英のネイティブ・スピーカーでは決してやらない発音・・・日本人独特の発音なのですが、子音よりも【AIUEO】という母音が勝ってしまう・・・をされる部分もあり、又、フレーズの途中や、終わりで、コブシというか、ちょっとだけ、ワザとベタつかせるような表現もされていました。 そういうのは、外人は絶対にしません。 【昭和歌謡(ブルース)】のシンガーが、アチラモノを歌うと、【微笑ましい野暮ったさ】と言うか、嗚呼、日本人だな、と思わせるところがあります。 天野さんの歌唱には、ウッスラとながら、そういうものが感じられました。 恐らく、ジャズを歌われる以前に、ポップス(歌謡曲)を多く歌われていたのでしょう。 その当時の感触が良い感じに残っているようで、単なる【本場の物真似】になっていないところがあり、良いなあと思いました。
器楽もそうだとは思いますが、ボーカルは、特に【十人十色】だな、とつくづく思います。 シンガーの場合、或る意味、スッポンポンになってしまう、と言うか、自分自身の【成り立ち】、【経験】がモロに出てしまうのではないでしょうか? 【本場ニューヨーク】で長年活躍されている天野さんの成功の秘訣は、恐らく、【本場】の真似をしようとした事ではなく、自分が通ってきた道・・・歌謡曲やブルースetc.・・・で培った【SOMETHING】の自然な表出、だったのでしょう。 勉強になります。 音楽をやる場合、全ては【真似】から始まるのでしょうが、最終的には【自分自身】が勝負になるのですね。